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家族と財産を守る家族信託の基礎知識を解説! 注目

2024.02.28

認知症や死亡の際のリスクを減らす不動産オーナー必見の制度

不動産という資産の保有には、日々の運営や管理にあたってさまざまな判断が求められます。年齢を重ねるに連れてその負担が大きくなり、この先の不動産運用に不安を感じる方もいらっしゃるのではないでしょうか。また自分に万が一のことがあった場合の事業継承も、不動産オーナーの皆様が抱えるお悩みのひとつです。

今回はそんなときに知っておきたい「家族信託」の制度について、基本的な仕組みをご紹介します。金銭や不動産はもちろん、会社の事業継承などさまざまなケースで利用できるため、それぞれのニーズに合わせて将来に備えることができます。



所有者と利益の享受者を分けることで、さまざまなリスクを回避

家族信託は信託法の改正によって2007(平成19)年に開始された制度で、不動産や金銭などの財産を信頼できる家族や相手に託し、管理・処分・継承する財産管理の手法です。比較的新しい制度ではありますが、財産の継承先だけでなくその使用目的も定めることができ、成年後見制度や遺言など既存の法制度では対応できない問題を解決できると、近年注目されています。

この制度が開始されるまでは、財産の所有者のみがその管理処分権を有して、経済的利益を享受する仕組みでした。しかし家族信託では、信託財産に対する管理処分権を持つものと、経済的利益を享受するものを別に設定することができます。家族信託を利用することで、実際にはどのようなことが可能になるのか、具体的な例を見ていきましょう。



家族信託でできることは?具体的な仕組みを知り、もしもに備える

1.委託者・受託者・受益者を分けることで家族全員の生活を守ることができる

家族信託の登場人物は主に3人。契約の目的を決め、自分の財産を預ける「委託者」、財産を預かり、目的に従って資産を動かしていく「受託者」、そして家族信託によって生まれるさまざまな利益を得る「受益者」です。実際には委託者と受益者が同じ人になるケースが多いとされています。これまでの制度では財産を託されたものは指示通りに動くだけで、自身の判断で柔軟に対応することができませんでした。しかし家族信託では、信託の目的内という制約はあるものの、受託者が自身の判断で自由に行動することができ、状況に応じた柔軟な財産管理を実現することが可能です。


また二次相続以降の帰属先を決められることも特徴のひとつ。受益者の死亡による受益権の継承や信託終了時の財産の帰属先を契約で定めておくことにより、数世代先の財産継承について決めることができます。


<具体的な例>

・自分(委託者)が認知症になった場合に備え、所有している不動産の管理を娘(受託者)に任せ、その利益を自分と妻(受益者)の介護費用として充てる。


・自分(委託者)の死亡後、まずは妻に信託財産(受益権)を継承させ、妻の死亡後は信託を終了する。その際余った財産を自分の弟に渡すよう契約書を作成しておくことで2代先まで遺言を作成しておくのと同様の結果を実現することができる(既存の遺言制度で決められるのは一次継承先(この場合は妻)のみ)。



2. 生前から信頼できる者に自分の財産を託すことができる

たとえば認知症になり判断能力が低下した場合、預貯金を管理する、不動産を売却するといった対応がご自身では難しくなることも。たとえ家族であっても勝手に本人の財産を扱うことはできないため、最悪の場合には資産が凍結してしまうリスクがあります。家族信託ではこのようなリスクに備え、「万が一の際は預けた財産から自分の生活費を拠出してもらう」と使用目的を定めたうえで、あらかじめ家族に財産を託すことができます。


またこれまでの成年後見人制度では本人の財産を守ることが最重要とされているため、預貯金があるうちの不動産の売却や金融資産の処分など、柔軟な資産活用を行うことが難しいという課題がありました。 家族信託では、本人名義の不動産の売却や積極的運用などを委託することができ、状況に応じた資産の有効活用が可能になります。


<具体的な例>

・アパートのオーナーである父(委託者)に代わって、後見人の息子(受託者)が大規模修繕や建て替えを行い、引き続き不動産の管理・運用をすることができる。また家賃等の信託財産から生じる利益を父(受益者)の生活費用に充てるよう、使用目的を決めておくことも可能。



3.家族間だけでなく、事業の継承なども対象

家族信託はオーナー社長の事業継承にも効果を発揮します。たとえば株価の低いうちに後継者に株式を継承させることは事業継承の有効な手段のひとつですが、株式を譲渡すると会社の経営権を失ってしまいます。家族信託では株式を経営権と財産権に分離し、経営権をオーナー社長に留保しつつ、株式を後継者に継承させることが可能となります。


<具体的な例>

・株価の低いうちに株式を後継者である息子に贈与する(株価が低いため贈与税はかからない)。その後、父であるオーナー社長と息子との間で家族信託契約を締結し、父を受託者として経営権を委ねる。その際、父の死亡など一定の事由が生じた段階で家族信託が終了し、経営権が息子に戻るよう設計する。そうすることによって将来株価が上がった場合でも、株式の所有権はすでに息子に移転しているため贈与税が発生しない。


このように受託者や受益者、目的などを柔軟に決めることができるのが家族信託のメリットです。逆にデメリットはほとんどありませんが、比較的新しい制度であるために相談できる専門家が少ないことや、始める際にある程度のコストがかかることが挙げられます。長期的にかかるコストに比べればトータルで割安になる場合もあるため、気になる方はぜひ一度ご相談ください。



具体的な手続き

ここまで読んで、家族信託に興味を持たれた方も多いかと思います。では実際にどのような手続きが必要となるのでしょうか。 まずは目的や預ける財産、受託者、受益者を決定し、契約書を作成します。実務上は契約書は公正証書で作成することがほとんどです。公正証書の場合、公証人の面前で契約書に署名捺印を行います。そのほか預金口座の開設や、不動産を信託する際は登記等が必要です。受託者は年に1回、貸借対照表等の書類を作成し、受益者に報告する義務があります。


個人で申請することも可能ですが、手続きが煩雑であり、トラブルや対応漏れを避けるため、司法書士や税理士、行政書士などの専門家に依頼することをおすすめします。



アパートナーの取り組み

当社では専門家と相談しながら、実際に家族信託の制度を利用し、それぞれのご希望に合わせた資産の有効活用のご提案をさせていただいております。


【実例①】

お母様が所有する土地建物を娘様へ信託しました。受託者の娘様にて土地建物の売却手続きをお母様に代わって行い、その売却代金を信託専用口座にて管理。家族信託の手続きにより、将来的なお母様の対応負担を少なくしつつ、現金化した資産はお母様の意向に沿って利用することができるため安心です。


【実例②】

お父様が所有する土地及び預金等を娘様へ信託しました。娘様と相談して新たに借入を実行し、お父様が所有する土地に賃貸マンションを建築するプロジェクトを進行中です。家族信託の制度を利用して、お父様が所有する資産について、さらなる有効活用が見込める形となりました。


家族信託の制度利用にあたっては、現在の資産の状況やご家族の状況など、個々の事情に合わせた入念な検討が必要不可欠です。当社では専門家と連携しながら、皆様それぞれに最適なご提案をさせていただきますので、お気軽にご相談ください。

お問合せ先

アパートナー中目黒店

東京都目黒区上目黒1-16-11 秋元ビル1F

TEL:03-3710-8883



記事監修
司法書士事務所アシストライト
司法書士 赤津寛紀(あかつ ひろき)
https://www.soudan-form.com/familytrust-support/specialist/6318/

※参考文献
「司法書士・税理士・行政書士が教える 絶対に知らないとヤバイ!家族信託の手続きの進め方」
赤津寛紀、柴崎貴子、中山浩志 著


※参考サイト
法務局 https://houmukyoku.moj.go.jp/kobe/content/001354479.pdf

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